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「DC移行」を検討中の経営者へ。あえて今、DB(確定給付)を残すべき3つの理由——iDeCo拡充が変える退職金制度の「正解」と、制度に潜む「まやかし」 

  • 執筆者の写真: 栗原 正明(CFP)
    栗原 正明(CFP)
  • 4月20日
  • 読了時間: 3分

更新日:4月28日

「今のDB(確定給付年金)は利回りが低すぎて、社員に申し訳ない……」 「世の中の流れに合わせて、社員が自分で運用できるDC(確定拠出年金)に切り替えるべきではないか?」

退職金制度の見直しを検討されている経営者の方から、最近このようなご相談を多くいただきます。FPとして、私はあえてここで「DC移行、ちょっと待ってください」と申し上げたいです。

今後iDeCoの拠出枠が大幅に拡大される今だからこそ、「会社が守るDB」と「個人が攻めるiDeCo」の組み合わせが、中小企業にとって良質な布陣になるのです。

1. DBは「利回り」を競うものではなく、「安心の床」である

従業員から「もっと増やせるはずだ」という不満が出ると、経営者はつい申し訳なさを感じてしまいます。しかし、相場は常に良い時ばかりではありません。 会社が給付を保証するDBは、いわば「人生のセーフティネット」です。利回りが低くとも、退職時に「必ずこれだけは受け取れる」という確定した数字があることは、従業員の心理的な安定、ひいては本業への集中に直結します。その「確実な約束」こそが、経営者の誠実さそのものなのです。

2. DCという「管理の重圧」を会社が背負うリスク

企業型DCを導入すれば、会社は継続的な「投資教育」の義務を負い、経理・総務は煩雑な管理業務に追われます。利回りが下がった時には、結局また「制度への不満」が会社に向けられることになります。 運用の「攻め」の部分まで会社がリスクを負って用意する必要はありません。今後iDeCoの枠が月額 6.2万円 まで拡充されれば、意欲のある従業員には、すでに十分な「個人の戦場」が用意されているのです。

3. 今後の最適解:DBを「守り」、iDeCoを「攻め」にする

私が提案したいのは、役割の明確な切り分けです。

  • 会社(DB): 最低限の老後のベース(床)を、会社が責任を持って守り抜く。

  • 個人(iDeCo): 会社が守ってくれている安心感を背景に、自分の判断で「攻め」の運用を行う。

会社が用意すべきは「DCという複雑な箱」ではなく、「今のDBを維持しつつ、社員がiDeCoを使いこなせるようになるための教育」ではないでしょうか。

【提言】その「はぐくみ」は、本当に社員を想う仕組みか?

ここで、最近流行している「はぐくみ基金(選択制DB)」についても触れておかねばなりません。「DBの安定性を持ちつつ、社会保険料も削減できる」という触れ込みで導入する企業が増えていますが、私は強い疑問を感じています。

この仕組みの多くは「給与原資」を削って拠出する「選択制」です。つまり、DBという名前でありながら、実質的な拠出負担を従業員に負わせているのです。

さらに、社会保険料が下がるということは、将来の「老齢厚生年金」が減ることを意味します。経営者自身の負担を減らすために、従業員の将来の年金を削る仕組みを「これが君たちのための退職金だ」と言って渡す。これは果たして、本来の「経営者の親心」と言えるのでしょうか?

結び:経営者の責任とは「選択肢」を与えること

会社は「確実な未来」を自らの負担で保証し(DB)、従業員は「大きな未来」を個人の自由で掴み取る(iDeCo)。 この役割分担こそが、管理コストを抑えつつ、従業員の満足度を最大化する「賢い経営者の選択」だと確信しています。

「従業員の人生の『底』は、会社がしっかり支えている。だから、安心して外の世界(iDeCo)で挑戦してこい」と。

 
 
 

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