「教育資金の一括贈与」終了に寄せて——デジタル時代の決済と放置された税法のギャップ

「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度」の終了が決まりました。この制度の終了自体よりも、信託銀行の手続きの煩雑さなどが改善され、現代のキャッシュレス社会に即した「誰もが使いやすい制度」へと進化することなく姿を消してしまう点に、現場のFPとして強い口惜しさを覚えます。
「都度贈与なら非課税」という原則の現実味
税法の原則(相続税法第21条の3)では、入学金や授業料、塾代など「教育費を必要なその都度、祖父母が支払う分にはもともと非課税」とされています。一括贈与制度がなくなっても、このルールがあるため「問題ない」と説明されることが少なくありません。 しかし、現代の決済インフラにおいて、この原則をそのまま実行することは極めて困難です。
現在、学校の授業料や塾代の多くは「親名義の口座からの自動引き落とし」や「クレジットカード決済」が主流です。かつてのように祖父母が紙の振込用紙を持って銀行窓口へ行き、直接支払える機会は大学の初年度納付金などごく一部に限られています。
親口座を経由する精算に潜む「税務リスク」
では、親の口座から引き落とした後、祖父母から同額を親の口座へ送金(補填)してもらうスキームはどうでしょうか。 生活実態に合わせた合理的な方法に見えますが、税務上は「祖父母から親への現金(生活費・教育費名目)の贈与」と判定されるリスクを拭えません。親の口座内で他の資金と混ざってしまうため、「確実に教育費に充てられた」と証明するハードルが高く、制度上の安全性が担保されていないグレーゾーンとなってしまうのです。
なお、存続する「結婚・子育て資金の一括贈与」に関しても、小学校〜大学などの学費や塾代は一切対象外となっています。
制度のアップデートなき終了と、今後のご家庭の選択 時代の変化に合わせて制度を「デジタル決済や口座振替でも安全に使える形へアップデートする」という選択がなされず、不便なまま放置されて終了を迎えたことは非常に残念です。 教育資金の準備においては、国が無条件に提示する制度を鵜呑みにするのではなく、ご家庭ごとの現実的な決済手段に即した安全策をとることが重要です。 リスクのあるグレーゾーンの運用に頼るのではなく、暦年贈与の基礎控除(年110万円枠)の計画的な活用や、親世代による「新NISA、
こどもNISA」を用いた自力での資産形成を組み合わせるなど、地に足の着いた戦略を再構築していきましょう。



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