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「成年後見制度」と「家族信託」どう使い分ける?~認知症による“資産凍結”を防ぐために~  

  • 栗原 正明
  • 2025年12月12日
  • 読了時間: 4分

更新日:1月24日

みなさん、こんにちは。 FPオフィス ジェイワンの栗原です。

私は今年度、日本FP協会の「広報センタースタッフ 無料電話相談員」を務めております。 実際に電話相談の現場に立っていると、昨今、非常に増えている「ある悩み」があります。


それは、「親の認知症と、それに伴うお金の管理」についてです。

「親の物忘れが進んできた。今はまだ元気だが、将来実家を売却して介護費用に充てられるだろうか?」 「銀行の窓口で、意思確認ができないと手続きを断られてしまった」こうした切実な声を聞くたびに、「元気なうちの対策(ライフプランニング)」の重要性を痛感します。


今回は、認知症対策としてよく比較される「成年後見制度」と近年注目されている

「家族信託」の違いについて、現場の視点から分かりやすく解説します。


<認知症で起こる「資産凍結」のリスク>

認知症が進み、意思能力がないと判断されると、法律行為ができなくなります。 具体的には以下のようなことが起こり得ます。

  • 銀行口座が凍結され、預金が下ろせなくなる

  • 定期預金の解約ができなくなる

  • 自宅(不動産)の売却や大規模なリフォームができなくなる

  • 賃貸物件を持っている場合、契約更新や修繕ができなくなる

つまり、「お金はあるのに、親のために使えない」という状態になってしまうのです。これを防ぐための制度として、主に2つの選択肢があります。


1. 「成年後見制度」:財産を厳格に“守る”制度

これまで一般的だったのが「成年後見制度」です。家庭裁判所が選任した「後見人」が、本人に代わって財産管理を行います。

  • 特徴:財産を減らさないよう「守る」ことが最大の目的です。

  • 注意点:本人の財産保護が最優先されるため、例えば「孫の教育資金にお金を出したい」「相続税対策でアパートを建てたい」といった、資産を積極的に活用する行為は原則として認められません。また、親族が後見人になれるとは限らず、専門家が選ばれた場合は継続的に報酬が発生します。


2. 「家族信託」:家族のルールで柔軟に“管理・活用”する仕組み

これに対して、近年利用者が増えているのが「家族信託」です。 一言で言えば、「親の財産管理を、信頼できる家族(子など)に託す契約」のことです。

仕組みは以下の通りです。

  • 委託者(財産を託す人):親

  • 受託者(管理する人):子

  • 受益者(利益を受ける人):親

財産の名義形式上、子(受託者)に移りますが、そこから生まれる利益(家賃収入や、生活費としての利用権)は親(受益者)のままです。 そのため、贈与税はかからず、実質的な所有者は親のまま、管理権限だけを元気なうちに子へ渡すことができます。

  • メリット

    • 柔軟性:成年後見制度よりも柔軟に、資産の組み換え(売却や購入)が可能です。

    • 親の想いを反映:「自分が認知症になったら、自宅を売ってそのお金で○○ホームに入りたい」といった具体的な希望を契約に盛り込めます。

    • 二次相続の指定:遺言書の機能も持たせることができ、自分の次の世代、さらにその次の世代への資産承継先まで指定可能です。


どっちを選べばいいの?FPの視点

では、どちらが良いのでしょうか? それは「ご家族が何を望んでいるか(ライフプラン)」によります。

  • 身寄りがなく、第三者にしっかりと財産を守ってほしい → 成年後見制度

  • 家族で話し合いができており、親のために柔軟に資産を使っていきたい → 家族信託

このように目的によって適した手段は異なります。


最後に:「元気なうち」でないと間に合いません

最もお伝えしたいことは、「家族信託」も「任意後見」も、親御さんに判断能力があるうち(元気なうち)にしか契約できないということです。

電話相談でも、「すでに認知症が進んでしまっているのですが…」というご相談をいただきますが、その段階では「法定後見制度」しか選択肢が残されていないケースがほとんどです。

「まだ早い」と思っている今こそが、話し合いのベストタイミングです。 お盆やお正月など、ご家族が集まる機会に、「これからの暮らし方」について少しだけ話してみませんか?

当オフィスでは、特定の制度を無理に勧めることはありません。「家計のホームドクター®」として、ご家族の状況やライフプラン全体を見渡し、最適な方法を一緒に考えます。 「まずは何から考えればいい?」という段階でも構いませんので、お気軽にご相談ください。

 
 
 

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