ミュージシャンとして初めて仕事をもらった時、
「ギャラだけど、2並びでお願いします。」と言われ、
「はい」と答えても実際には、なんのことか全くわからなかった覚えがあります。
先輩ミュージシャンに聞くと、「それは実際には2万円のギャラなんだけど、1割税金を預けることになるので、請求書には22,222円って書いて出して、実際に振り込まれるのは
2万円ってことね。」との返答。「へー」って思いましたが、特になんの気にも止めず、
その認識のまま10年は経過したような・・。
今のミュージシャンの方達は、これぐらい当然知っていることかもしれませんが、
一応備忘録として。
報酬の支払い側には、“源泉徴収の義務”があります。これは報酬を支払う際に予め
税金を預かり、翌月の10日までに預かった税金を税務署に納付する義務になります。
以前は10%ちょうどだったので報酬を並びにして、支払う際にキリの良い金額に
なるようにしていました。それが “並び” の根拠になります。
ただ現在は震災復興税として0.21%が加算され、10.21%(1回で100万円以上の支払いの
時は、20.42%)になっているので、そもそもキレイな並びにはならないことになります。
ミュージシャンのギャランティは「キリの良い金額」の方ではなく、源泉徴収された金額を
含んだ総額が正式な報酬額となりますので、報酬の計算時には注意するようにしてください。
会社員はこれを所得税として、毎月の給与支給時に天引きされています。では所得税も
10.21%引かれているのかというと、会社員の場合は所得税の計算時に健康保険や年金の
金額が予め控除されているので、10%までの金額にはなっていません。
「なんだ、じゃあフリーランスは不利なのか?」というと、そこで大切なのが“確定申告”と
いうことになります。確定申告で支払済の健康保険、年金、必要経費などを申告して、
源泉徴収されている税金から、払い過ぎの部分は還付(返してもらう)してもらいます。
例えばあるミュージシャンの1年間のギャランティ総額が500万円の場合は、源泉徴収として500万×10.21%=510,500円の税金を納めていることになります。(結構多いですよね)でもその500万円のギャラを得るために機材を数百万円購入し、前述の健康保険や
年金などの控除金額と合わせて、 1年間でかかった費用が300万円あったとすると、
実際に儲けになった金額は、500-300= 200万円ということになります。この場合
税金は200万×10.21%=204,200円収めれば良いことになり、
510,500-204,200=306,300円が戻ってくることになります。
繰り返しになりますが、ギャランティは手取り額(銀行に振り込まれた金額)ではなく、
源泉徴収(10.21%)額を含んだ金額になりますので、毎月、毎年の報酬の計算時には間違わないようにしてください。そして確定申告をしっかりと行って、正当に還付されるべき税金はしっかりと戻すようにしてください。
※なお私の方でアドバイスまでは可能ですが、実際の税金の計算はファイナンンシャルプランナーには行えない業務になりますので、実計算がわからない場合は税理士にお願いするようにしてください。
Comments